落語家の林家正蔵(44)が、東京国税局から約1億2000万円の所得申告漏れを指摘され、重加算税など合計約4000万円余を追徴課税されたことが16日、分かった。落語界の一大イベントだった平成17年3月の“正蔵襲名”の祝儀などを隠していたもので、自宅にあった大量の祝儀袋を当局に摘発された。正蔵は同日夜、仕事先の東京都渋谷区のNHKで会見し、「隠したという認識は全くありません」と釈明した。
申告しないで、どーもすいません!?
偉大な父・三平もびっくりの巨額所得隠しを、正蔵が指摘されていた。会見で「税理士に聞いてください」の一点張りだった正蔵だが、「お父さんに何と説明を?」と聞かれると、「怒られるに決まってます」と肩を落とした。
正蔵は17年3月、林家こぶ平から九代目正蔵を襲名。同月13日に東京・上野で14万人以上を集めてのパレード、17日に都内のホテルでのパーティー、さらには全国約60カ所での興行など、盛大な“襲名記念イベント”を相次いで開催した。
この際の祝儀が、所得隠しの材料となっていた。前出のパーティーには、芸能界だけでなく政財界から850人が集結。1人で数百万円もの祝儀を包んだ後援者もいたという。
正蔵の事務所関係者などによると、昨年の夏ごろに東京国税局の税務調査が入り、自宅地下のオーディオルームから空の祝儀袋などが見つかった。芸能人が後援者らから集めた祝儀は「事業所得」として申告が必要だが、正蔵はこの一部を除外して申告していた。
正蔵はかつて、本名の海老名泰孝でジャズ評論家として活動したほどのマニアで、ラジオでジャズ番組を持ったこともある。この地下室にはLP3万枚、CD1万枚以上のジャズ作品をコレクションしており、映写室としても利用している。そんな至福の自室に、襲名イベントで使った小道具と一緒に祝儀袋を保管していたことから、“アシ”がつく結果となった。
国税当局は空袋の記載から算出した約2200万円が、意図的に申告から除外されたとして、所得隠しと認定した。他にも単純な経理ミスなどがあり、申告漏れの総額は17年までの3年間で約1億
2000万円、重加算税と過少申告加算税を含めた追徴課税は約4000万円余とみられる。
同事務所では「襲名披露に欠席し、代理の人が祝儀だけ持ってきた分について、単純な申告ミスがあった。意図的に隠そうとしたものではなく、(国税局との)見解に相違があったが、指摘に従って修正申告した」としている。
芸能界では昨年、狂言師の和泉元彌(32)が約1億2000万円、一昨年は漫才コンビの今いくよ・くるよが約7200万円の所得隠しを指摘されるなど、同様のケースが後を絶たない。正蔵の襲名披露は、落語ブーム再燃の起爆剤として、落語界に多大な貢献を果たしたが、祭りの舞台裏で所得隠しをしていたとは、落語ファンへの重大な裏切りといえそうだ。
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