個人投資家向けの金融商品「外国為替証拠金取引」(FX)で2005年までの3年間に得た約4億円を税務申告せず、所得税計約1億3000万円を免れたとして、東京都内の主婦が東京国税局から所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発されていたことが分かった。外為証拠金取引は少ない資金で多額の利益が期待でき、投資家の人気を集めている反面、税務申告しないケースが目立っているが、脱税が明るみに出たのは初めて。
告発されたのは、東京都世田谷区の主婦池辺雪子氏(59)。
関係者によると、主婦は自分と夫の名義で口座を開設、複数の先物取引会社を通じて商品先物取引や外為証拠金取引を行い、主に外為証拠金取引による所得を隠していた。数年前、親から財産を相続し、数千万円の運用資金があったという。親は千葉県内の開業医だった。
同国税局では、商品先物取引による所得はほとんど申告していたのに、外為証拠金取引の所得は全く申告していなかったことなどから、脱税の意図があったと認定。夫名義の口座で取引した点も、不正行為にあたると判断した。
外為証拠金取引は、外貨を売買し、為替相場の変動や金利差による利益を狙う商品。元手となる証拠金の数倍から数百倍の外貨を売買できるため、大きな損失を被る危険がある一方、多額の利益を上げることも可能だ。円安傾向もあって人気を集め、売買高は年間300兆円を超えるという。
主婦は取材を拒否したが、夫は「本人は反省しており、修正申告も済ませた」と話している。
人気の商品 投資家の7割無申告
解説 外為証拠金取引で利益を得た投資家の7割が無申告――。国税当局が取引を扱うある会社の顧客について税務調査した結果、浮かんだ数字だ。また、この取引による所得を申告しなかったとして追徴課税された投資家は、昨年12月までの半年間だけで100人を超え、申告漏れ総額が約20億円に上ったことも既に判明している。
外為証拠金取引を巡って無申告がまかり通る背景には、証券会社や先物取引会社には一部の取引を除き、顧客の取引記録を税務署に提出する義務のないことがある。「申告しなくてもばれない」という、投資家の安易な意識がうかがえる。
「貯蓄から投資へ」という時代の流れの中、為替や株式などを組み合わせた金融商品の登場によって、今回告発された主婦のように、プロの投資家ではなくても億単位の資金を稼ぎ出すことが可能になった。
しかし、金融商品によって、他の所得と合算できたりできなかったりして、課税方法や税率が異なる。国税当局が投資家の所得を把握できる仕組みが不十分なだけでなく、納税者にとっても不便だ。こうした状態を改善するには、金融商品の売買に伴う所得の課税方法や税率を一本化し、適正な申告が行われる環境作りが必要だろう。(竹原興)
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